マイクロ広角レンズの全て

12.ビデオカメラ用正立プリズム

オプション部品(45度正立プリズム、アイリス絞り)
'05/7/17
Kochan

TV番組制作製作会社から要望の強いマイクロ広角レンズ(特注品)の紹介です。TVカメラにマイクロ広角レンズを使用する場合、
通常のストレートタイプのマイクロ広角レンズを装着するとTVカメラの本体が大きいため地面すれすれのアングルに制限(地面を掘って
カメラ本体の底が邪魔にならないようにするとか、段差のある場所でのロケを行うなど)が出てしまう。従って、光学系を
曲げたマイクロ広角レンズ製作の強い要望が有ります。スチルカメラとしても、ファインダー像が180度回転した倒立となっている
ためこれを正立に補正するためにも、これまで幾度か45度正立プリズム(シュミット・ダハプリズム)のインストールを試みて来ました。
しかし、解像度が落ちるためお勧めできるレベルにはほど遠い状態でした。今回は、比較的解像度の良いプリズム(少し大きく重いのですが)
が見つかりましたので、これを組み込んだマイクロ広角レンズを製作しました。また、本体の無限光学系にアイリス(12枚羽根絞り)を導入
(CCTVレンズの絞りは3枚羽根で少なすぎる)しました。このレンズの性能テスト結果をお知らせします。結果ですが、スチルカメラには
ちょっときついが、ビデオカメラには十分な、ハイビジョンにも何とか使える45度屈折マイクロ広角レンズがはじめて完成したと言えるでしょう。
 

タイプBをベースにしたTVカメラ用(45度正立プリズム付き)マイクロ広角レンズの試作品です。赤字が新規追加部品です。45度プリズムが重く、フォーカス筒が45度曲がって付くため、ねじりや引き抜きの機械的強度を確保する必要性が有りました。従って、これまでのズーム筒に替え金属筒だけの集光バレルを採用しています。回転角調整フランジ部の調節はイモネジをマイナス・ドライバーでゆるめる必要が有りますが、ここは飾りネジに替え常に調節できる様にした方が便利かも知れません。アイリス部分は脱着可能で、装着時は全長が16.5mm伸びる事になります。このアイリスと45度正立プリズムが挿入される部分は無限光学系ですから距離が伸びるだけなら何の影響も有りません。

 
 
 45度正立プリズム装着時(上図)のテストチャート撮影試験

・ビデオカメラに装着する場合はこの図の様に、B4マウントを使う事が多いのですが(ソニーカメラ)、ここではCanonのD60でテストするため、EOSマウントに付け替えて試験をしました。

・ビデオ用では、顕微鏡対物レンズは2.5倍ですから、APS−CのD60で撮影すると左図の様な画像となります。中心の赤枠がビデオの撮像サイズである2/3インチの画角となります。テストチャートの周辺に写っている物をみても判断できると思いますが、正立像となっています。焦点距離1.6mm、絞り開放CCTVレンズのフォーカスリングはいちばん前に送り出した状態です。

 

 

 

 

・右上の赤枠(2/3インチ撮像エリア相当)分を切り取った状態です。解像度を確認して下さい。横500ピクセルは解像しています。

 

 

・CCTVレンズの焦点距離を3.4mmにした場合です。

 

 

 

 

・右上の赤枠(2/3インチ撮像エリア相当)分を切り取った状態です。解像度を確認して下さい。これをさらに、赤枠部分を原画サイズで横500ピクセル分(クリックした画像)を右に示します。

・少しぼけていて、画像が甘いのがわかりますが、これまで扱った45度正立プリズムではかなり良い結果です。(エドモンドの25mmプリズムはもっと良いのですが、該当するハウジングが無く、製作するには高価になりすぎます)

 

 

 

 

 
45度正立プリズムのみを外した状態での撮影試験

レンズ系としては スタンダードタイプのマイクロ広角レンズ・タイプBと全く同じ事になります。集光バレルの長さが固定されるためズーム機能は有りません。アイリスは12枚羽根のため円形絞りといって良いでしょう。上記の45度プリズムを入れた場合の解像度の規準になるのが以下の試験結果となります。

 
 

・焦点距離1.6mm、CCTVレンズのフォーカスリングはいちばん前に送り出した状態です。45度プリズムを装着した場合と比較して画角は全く変化していませんし、露出条件も45度プリズム脱着で変化有りません。画像は正立プリズムがないので当然、倒立となっています。

・左の赤枠(2/3インチサイズ相当)の拡大です。この画像と上記45度プリズム装着時の画像を比較するとやはりプリズム装着の方が少し解像度が落ちることがわかります。テストチャートの面の白レベルが色々なのは複数種類の光源を使用している為です。

 

 

 

 

・左上の赤枠部分の原画サイズ(クリック画像)を示しています。この場合はピクセル解像度が有ることを確認できます。

 

 

・焦点距離3.4mmでの画像です。絞りはCCTVレンズ側で1/4、アイリス側で1/2(少し絞ったくらいの位置に相当)

 

 

 

 

・右上の中の赤枠を原画サイズで示します。この場合もピクセル解像度が有ることを確認できます。

・左の状態からアイリズを最小まで絞った(露出は1/6となる)。アイリスサイズは最大で直径20mm、1/2で12.3mm、最小で3.3mmです。将来はアイリスを集光レンズボディーに装着する計画(タイプC)となっております。

 

 

・アイリスを最小まで絞った画像です。

 

 

・原画サイズの切り抜きです。絞らない3枚前の画像と比較するとかなりぼけが出てしまっている事がわかります。最小まで絞るのではなく1/2から1/8程度までが被写界深度と明るさ、解像度等のとのトレードオフ調整の範囲と思われます。

 

 

 
 
  

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