マイクロ広角レンズの全て

7.あおり

MWレンズの撮影テクニック3

'05/6/14

Kochan


いよいよ「あおり」の解説に入ります。CCTVレンズの焦点距離や絞りのパラメータを取り入れると、話が煩雑になりますので、

基本的に焦点距離は f=1.6mm 絞りは中(バーの1/4)に固定した条件のみの実例で話をすすめていきます。また、今回は

単純に「あおり」による効果のみを扱い、どの程度の操作で本マイクロ広角レンズの能力を最大限引き出せるかの感触を得て頂く程度に

留めたいと思います。応用としての複合技等については、明快に説明できる実際の被写体環境と画像が揃った時にあらためて行いたい

と思います。プロテクニックとして、いろいろな参考図書や説明記事が多くありますのでそちらを読まれるのもよいと思います。

 

・最初はあおり無しの画像です。前節では正面にテストチャート2が立てかけてありましたが、これを取り外し、もっと遠く(15m:マイクロ広角レンズにとっては実質無限大の距離に相当)のお隣さんの建物を正面の被写体に選びましたその手前5mの草木、フェンスなども参考になります。この画像だけではよくわかりませんので赤枠で囲んだ部分のの拡大を右に示します。

・水平においているテストチャート1の手前から奥まではおよそピントが合っていますが、それ以上の距離では全てぼけた感じになっています。もともと広角レンズですからぼけると言ってもこの程度までです。いちばん手前の部分(5mm角の格子)にピントと合わせると当然、チャートの先端部分はもっとぼけぼけになり建物もぼんやりとした像になります。例として、被写体が小さなアリなどと背景の富士山をいっしょに撮影するのはこのままでは無理な相談と言えます。

 

 

 

 

・本来はこの様な場面では下あおりで被写界深度を稼ぐのが常套手段(これ以降にじっくりと解説します)となりますが、この際逆に上あおりをしてみるとどうなるかを示しました。この画像でも十分おわかり頂けると思いますが、ほんの中心部分だけにピントが合っており、そのほかの部分はボケボケの状態です。撮影の特殊効果でたまに使われると聞きますが、マイクロ広角レンズでの用途にはほとんど無いケースだと思います。一応赤枠の部分の拡大を左に示します。

 

 

・これを一目みておわかりと思いますが、あおりが無かった上図より被写界深度が浅くなってしまった様に見えます。赤枠で囲った所以外は正面のテストチャートまでボケボケです。実は被写界深度は同じですが、逆の上あおりのため、焦点面がテストチャートと直交してしまったからこの様な現象となります。ピントが合っている所はちゃんとピクセルサイズまでの解像度が出ています。

 

 

 

 

・この画像は下方向目一杯(3mmギャップ)あおった状態のものです。右の拡大像を見てみます。

・水平に置いたテストチャート1は全ての部分が全ピンで撮影されています。しかし、テストチャート2の下以外は全てボケています。これは何が起こっているのでしょうか。実は水平線(無限遠)を画面の中心において下、手前と画像中心の無限遠が全ピンの状態なのです。従ってピント面は正面のテストチャート2の下部分をつき抜けてしまっている状態なのです。端的に、この場面ではあおりすぎと言える例となります。しかも画像中心を無限遠焦点まであおってしまうと上半分は理論的に絶対、焦点を結ばないのですから像のない、単に青い空とかぼんやりしていて良いものしかおけません。

 

 

・この場合はあおり中(2mmギャップ)の画像です。右の拡大像で検証してみます。

 

 

・どうでしょうか? テストチャート1は全ピンですが、手前の草木はまあまあで建物はボケボケです。前例の場合(3mmギャップ)の焦点面がほとんど水平だったのに対し、少し起きあがってきてはいますがこの場面でもまだあおり過ぎの様です。

 

 

・この場合はあおり小(1mmギャップ)の例です。

 

 

・ずいぶんと建物の像がはっきりしてきました。テストチャートも何とか全ピンを保っています。焦点面がかなり立ち上がって来ているのか実感できると思います。草木にもピント面が来ている様です。

 

 

・さて、さらにあおりを小さくして極小の場合(0.5mmギャップ)ではどうでしょうか。

・う〜ん、とうなってしまいますね。建物の屋根部分はピクセルサイズ解像度が出ています。テストチャートの中心部分も同様解像度が十分です。しかし、テストチャートの向こう側先端部分は少しピンが甘くなってきており、草木(5m)のピントも甘くなって来ました。この場面のあおりレベルはこの辺が最適と言えるのかも知れません。これ以上あおりを小さくしていくと、屋根のピントが甘くなり、草木、テストチャートの先端部分がもっとぼけて来るのは目に見えています。

 

 

・それではと言うことで上記あおりと同様、極小(0.5mmギャップ)で絞り込んで、被写界深度を稼いで見ることにしましょう。この考えが単なるスケベ根性で終わるか、それとも上手く行くのか・・・

・お!^^;上手くいったかな?解像度まあまあだし、建物の解像度はちょっと落ち、草木にはピンが戻って来た様です。しかし、コントラストの強い屋根と空の境界、いちばん手前の黒線と白地の境界には色ズレが出始めました。残念!  この様なコントラストの強い境界には色収差が目立ちはじめて来るようです。被写体が違えば許容できることもあるでしょうが、この例では絞りで被写界深度を稼ぐのはよろしくないようです。

 

 

・以上をまとめて、この様なポンチ絵を書いて見ました。(逆あおりは含みません)およそこのあおりと焦点面(フォーカス面)の関係を頭に入れて置いて撮影に望めば、カットアンドトライも少なく効率良く狙った効果の作品ができるのでは無いかと思います。

次回はマイクロ望遠レンズの解説を予定しています

 

 

 

 

 

  

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